秘書に求められるスキルセット ― 日本とオーストラリアの違い
「秘書」と聞くと、日本とオーストラリアでは求められるスキルがかなり違うと思っています。
今回はシリーズ最終回として、両国の求人広告の内容のトレンドと、私自身のキャリア体験を通して感じたことをまとめてみます。
日本での秘書に求められるスキル
日本の秘書の求人広告や、聞いたりしたところ、日本の秘書に求められるのは、こんなスキルだと思っています。
- スケジュール管理(カレンダー調整や出張手配)
- 礼儀・マナー(来客対応・お茶出し・電話応対)
- 正確さと事務処理能力(文書作成・経費精算)
- 語学力(英語)は「できれば尚可」という位置づけ
上司を支える「縁の下の力持ち」として、正確さと気配りが重視されるのが特徴です。
オーストラリアでのEAに求められるスキル
一方、オーストラリアのExecutive Assistant(EA)の求人広告に並ぶのはこんな言葉です。
- Confident communication(自信を持ったコミュニケーション力)
- Stakeholder management(社内外の調整力)
- Project coordination(プロジェクト運営力)
- Technology skills(ITツールの活用力:MS ワード、エクセルパワーポイント、など)
- Flexibility & initiative(柔軟性と主体性)
上司の右腕というより、チームやオフィス全体を動かす存在として求められるのがオーストラリアのEAのスキルの特徴です。
私のキャリア経験から
実は日本で教員をしていた頃、PCスキルはほとんどゼロでした!
オーストラリアに永住権を得てからもすぐに就職できず、知人に紹介された日系の貿易会社の事務職も「経験がないから」と最初は不採用。
それでも「頑張りますから!」と粘ってやっと採用していただきました。
初めての事務職では、電話応対もメールもPCもすべて一(イチ)から。まさに「事務オールラウンダー」として叩き込まれました。
取引先の(大手)社長秘書とのやりとりや、本社社長への贈り物の手配も任されましたが、電話応対では「何分待たせたらいいの?」と本社の方から厳しく叱られたこともありました。商社だったこともあり、お客様への対応には、今振り返ると、とても「日本的」な態度が求められました!
1年後にいただいたEAのポジションでは、日英バイリンガルスキルとオーストラリアと日本の文化、ビジネス習慣への理解が大きな武器になりました。
面接で、ローカルの(オーストラリア人)人事の方から、「どうしたら、日本人のことを理解することができますか?」ということを聞かれたことを覚えています。
上司と他の日本人駐在員の英語サポートに加え、トヨタがテクニカルセンターをがメルボルンに設立されるという一大イベントでしたので、日本とオーストラリアの文化・仕事の風習の橋渡しをする役割を担いました。
日本のやり方をそのまま持ち込むと、オーストラリアでは「いじめ」に見えてしまうこともあるーそんな場面にも幾度も遭遇しました。文化の違いが生む摩擦を和らげるのも、EAの大切な役割だったと思います。
バイリンガルスキル・事務スキル・仕事の幅広さ、そして信頼
振り返ってみると、私がこの仕事で最も役立ててきたのは:
- バイリンガルスキル:言葉の橋渡し以上に、文化やニュアンスを理解して伝える力
- 事務スキル:電話・メール・PC操作から地道に積み上げた「事務力」(習ったことはなく、すべて仕事で学んだ)
- 仕事の幅広さ:備品の管理からVIP対応、会社設立サポートまで、とにかく「何でもやる」柔軟さ
- 信頼を得るスキル:シニアレベルの会議コーディネートや人事に関わる中で、常に情報管理を徹底すること。
- オープンマインド:さらに、清掃スタッフから大企業のトップまで、あらゆる人と関わるからこそ、オープンなマインドとコミュニケーション力が欠かせません。
まだまだ修行中です!
日本とオーストラリアでは、秘書に求められるスキルセットが大きく違います。
けれど共通して大切なのは、信頼を築き、相手のスタイルを尊重しながら支える姿勢です。
スキルや経験は後から身につけられるものですが、信頼なくしてはこの仕事は成り立たない―それを日々感じています。
このシリーズは今回でひと区切りですが、私も、まだ現役EAとして、まだ修行中です。業界も違えば、秘書業務も違います。またの機会に、「秘書のお仕事」をテーマにした記事を書いていきたいと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。コメントなどいただけたら嬉しいです!
秘書としてのキャリアを書いてきましたが、次回は、「学生ケア」をしていた頃のキャリアのご紹介をしたいと思っています。こちらも、実は心から大好きだった仕事でした。楽しみにしていてくださいね。
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