逃げた先にも、愛が届くーイブが帰ってきた夜
先週末、1週間という短い日本滞在を終えて帰国しました。今回はこれまででの日本滞在でも思い出深く、濃い時間を過ごしました。
その中でも、妹の愛犬と愛猫にまつわる、ちょっとした“大事件”が心に残っています。
野生で生まれたイブ
妹の愛犬「イブ」は、もともと野犬として山で生まれ育ち、数年間は人間と暮らしたことのない子です。保護された時、2匹の子犬の子育て中でしたが、年齢は不詳です。
4年前に妹が里親になってから、家族の一員として迎え入れたものの、特に大きな音に敏感で、今でもどこか不安げな表情を見せることがあります。
ときどき、「やっぱり外に出たいな」という気持ちが芽生えるのか、スキを見ては逃げようとすることも。
実際、妹のもとに来て間もない頃、一度リードの金具が壊れてしまい、散歩中に逸走。でも奇跡的に、3ヶ月後に無事妹のもとに戻ってきてくれた経験がありました。

ハイキング中のハプニング
今回、私と息子が日本に到着した翌日、山好きの妹のパートナーが、長良山へのハイキングに連れて行ってくれました。イブも一緒に。長良山は実家から車で1時間ほどの、イブにとっても私たちにとっても初めて行く山でした。
散策中、木に繋がれていたイブが、上から落ちてきた石に驚き、すごい力で首輪をすり抜けて、逸走してしまったのです。
急いで下山し、周辺を探しましたが見つからず…。
2度目の逸走経験があった妹は、深い罪悪感に襲われながらも、「今できることを全部やろう」と、すぐに警察や保健所へ連絡し、迷子犬のチラシも作り始めました。イブが逸走したのは、午後2時ごろでした。
山のふもとの住宅街の外で見かけた人たちにも、イブの写真を見せて、見かけたら連絡いただくように、お願いしました。皆さん、親切に私たちの話を聞いてくれて、快く電話番号も交換していただきました。

直感が導いた奇跡
妹は、以前イブが逃げた際、チラシをたくさん印刷したのですが、近所の印刷屋さんで依頼しました。今回も「翌朝、印刷屋さんでチラシを100枚印刷して、イブが逃げた近くの住宅街でポスティングしよう」と話していたところ、印刷屋さんで依頼してもいいのですが、近くのローソンはまだ開いているし、値段も安いのでは、と私はふと思い、「今夜中に近くのローソンで印刷してみたら?」と妹に提案しました。
妹も同意し、データを持ってローソンへ向かいました。午後6時ごろのことです。
ところが、8時になっても帰ってこない…。心配になって電話すると出ず、ますます不安に。
数分後、妹から「イブを見つけたから、しばらくここにいるね」という連絡が!
驚いたのも束の間、さらに30分後には「イブを捕獲できた!」と。
なんと妹は、チラシ印刷後そのまま、イブを逃した山のふもとの住宅街へ向かい、配布を始めていたのです。
あるお宅を訪ね、ご夫婦と話していたその時…目の前にイブが現れたのだとか!

イブとの距離、少しずつ
ただ、元野犬のイブは、すぐに「ママ〜!」と走り寄ってくるような子ではないのです!
パンやおやつを持っていなかったのですが、ポスティングをしていた時に、偶然にも話していたお宅のご主人がパンを差し出してくださり、それをきっかけに少しずつ近づいてきて、最終的に妹とご主人の二人がかりで捕獲成功!
妹のために動いてくれた見ず知らずの方たち、本当に感謝しかありません。
こうして、イブはまた無事に家族のもとへ戻ってきてくれたのです。
帰宅後のイブは、どこかバツが悪そうな顔つきで、
「私は怖かっただけなのに…」と言っているようにも見えました。
4年前、3ヶ月ぶりに戻ってきた時のあの表情とまったく同じです。
翌日、妹は、早速、保健所や、警察署、そしてご協力いただいた近所の方達へ、「無事に保護できた」ことを知らせました。保健所や近所の皆さんは「本当に良かった。」と一緒に喜んでいただけました。
ラッキーも冒険へ
そして数日後、今度は妹の猫「ラッキー」が外へ飛び出してしまうというハプニングが!
朝、私がうっかり玄関ドアを閉め忘れてしまい、そのすきにサッと外へ…。
妹は用事があったので、責任を感じた私。。。様子を見に行くと、お隣の軒下にひっそりと潜んでいました。
その時、妹の家の周辺に最近住みついている野良猫「ジンジャー」が、私の足元にスリスリ。
「遊ぼうよ!」とでも言うように、ずっと寄り添ってくれました。
一方、ラッキーは私に近づくことなく様子を伺ってばかり。
45分ほど見守って、ようやく出てきたところをそっと抱きかかえて、無事におうちに戻りました。

自由を愛する命たち
元野犬のイブも、元野良猫のラッキーも、やっぱり外の世界が気になるんだよね。
好きな時に外へ出かけて、夜だけ家に戻る――イブやラッキーにそんな自由があれば理想かもしれません。
でも今の社会では、それが彼らの命の危険につながることもある。
だからこそ、限られた環境の中でも、できるだけ快適に、そして安心して暮らせるよう、私たちが工夫してあげなければと思います。
今回の出来事は、まさに奇跡。
知らない土地で逸走した元野犬が飼い主のもとに戻る確率は、ほとんどゼロに近いと言われています。
それでも戻ってきてくれたのは、妹とイブの間に、深い絆と縁があるからこそ。
これで、イブの逸走は3回目。
「また逃げた」と思うかもしれないけれど、3度とも戻ってきてくれているということは、きっと何か大きな意味があるのだと思います。
少なくとも、妹は「イブがいてくれて幸せ」と感じています。
そんな妹の気持ちを、イブはちゃんとわかっているのかもしれませんね
私たちはいつも、動物たちからたくさんのことを学ばせてもらっています。
信じる気持ち、辛抱強く待つ忍耐、そして一緒にいることの温かさ。
そんな動物たちと共に、やさしく、心豊かに生きていけたらと思います。
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